黄斑前膜について 平成18年7月1日号

 「物がゆがんで見えるようです」と言われる中高年の方の眼底を観察すると、網膜の中心の黄斑部と呼ばれる所に、薄いセロファンのような膜が張っている事があります。これを〝黄斑前膜〟といいます。
 眼球の中は硝子体という透明なゼリー状の物質で満たされていますが、この硝子体が年とともに少しずつ液体に変化して体積が小さくなっていき、しまいには網膜から離れていきます。この時、網膜と硝子体の癒着が強いと、うまくはがれないで硝子体の一部が網膜に張り付いたまま残ってしまう事があるのです。この残った硝子体が元になって黄斑前膜が形成されます。
 最初のうちは自覚症状もない事が多いのですが、徐々に進行すると、膜が分厚くなって下の網膜を引きつらせ、シワを形成したりします。カメラのフィルムに当たる所にシワができるため、物がゆがんで見えたり、視力が落ちたりするのです。
 残念ながら、薬で治す事はできませんが、進行はゆっくりである事が多いため、自覚症状が軽いうちは経過観察をします。病状が進行し、ゆがみが気になったり、視力低下が進んできたら、手術を行います。
 手術では、まず硝子体を取り除いた上で、網膜表面に張った膜をピンセットではがします。ただしあまり進行してからだと、術後も視力が戻らなかったりゆがみが解消しないケースもありますので、眼科医とよく相談しながら手術時期を考えていくのが良いでしょう。


きたの眼科:北野保子院長
診療所では、場合により在宅医療、往診にも対応。電話予約、電話相談にも応じる。星ヶ丘厚生年金病院、そのほかの病院との病診連携を行っている。
枚方市中宮西之町15-18-101 TEL072-890-2929

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です