健康寿命への取り組み
私の趣味は踊りである。洋舞・邦舞を問わず楽しんでいるが、なかでも信長が好んだ「敦盛」という幸若舞の一節に「人間(じんかん)50年、下天の内を比ぶれば夢幻のごとくなり」と気になる節がある。人の世の50年の歳月は下天の一日にしかあたらない。下天とは仏教における天上界を欲望の度合いに応じて最下位世界をさし、その下天の世界では一昼夜が人間界の50年に相当する長さになる。
この一節は仏教の天上界と比較することで人の世の時の流れのはかなさについて説明しているだけで、人の人生が50年と言っているわけではない。しかし、西暦1500年時代は50歳前後で亡くなった武将も多くいて、人間の一生は50年位と考えてもいいのではないかと思う。
往時から500年経った今や、平均寿命は80歳を超えて、予測であるが2050年には女性は90歳を突破する勢いであり、まさに100歳時代も見えてきている。
この時期、人々が介護を受け始めなければならない日を、一日でも遅らせる。すなわち健康寿命を延ばす試みとして、介護が必要となった原因をあげてみる。
①認知症18.7%②脳血管疾患15.1%③高齢による衰弱13.8%④関節疾患10.2%⑤転倒骨折12.5%⑥不明・不詳24.5%と言われている。これらの疾患、状態を予防あるいは治療することにより、健康寿命は延伸できる。
松谷病院理事長
松谷 之義氏
●京都大学医学部卒業
●京都大学医学博士
●日本呼吸器学会専門医
●日本ノルディック・ポールウォーク学会名誉会長