「大学生の力」 ~ボランティアで生きる思いやり~
最近の若者は——。普通は、不まじめな態度の若者に対して使う言葉です。しかし、取材を通じ、逆の意味で、「最近の若者は、すごい」と、驚かされたことがありました。東日本大震災の被災地でボランティア活動を続ける大学生の話です。枚方市に住む立命館大2回生、乾陽亮さん(19歳)。学生団体の代表として、昨年12月以降、被災地の宮城県七ヶ浜町に計6回、延べ200人以上の学生と一緒に訪れ、仮設住宅で、被災者の話し相手や子どもの遊び相手などをしています。活動の原点は高校1年の夏にボランティアで訪れたフィリピンでの経験。下水道もないような不衛生な環境なのに、笑顔で生活している人々を見て、「貧しく、不幸な国だと思い込んでいたけれど、間違っていた。現地に行かないと、現実は見えない」と痛感したそうです。
この体験を元に、「自分のように価値観が変わる経験を、多くの学生にしてもらいたい」と、昨年3月初めに団体を設立。直後に震災が起き、「自分たちに出来ることを」と、支援活動を始めました。
支援を続ける乾さんの姿に触れ、記者は、「アルバイトで稼いだ小遣いで、いかに遊ぶか」ということばかり考えていた自分の学生時代が恥ずかしくなりました。
さらに感心したのは、参加した学生が、被災者と接する前に、「今、子どもには、お年寄りには、何が必要だろう」と、被災者の立場に立って話し合いを繰り返し、接し方を考えていることです。
こうした事前の準備を考えたのは乾さん。若いのに、どうしてこれほど他人の心を思いやることができるのかと聞くと、「人の気持ちに敏感なんです」と言います。3歳の時に肺の病気で入院し、両親が心配して涙を流す姿を見てから、常に相手がどういう感情を抱くかを気にするようになったというのです。
「立派ですね」と水を向けると、「でも、両親からは、『周りの人のおかげなんやから、調子に乗ったらアカン』って、たしなめられるんです」とニコリ。最後は、屈託のない19歳の青年の笑顔でした。
読売新聞枚方支局 中田 敦之(平成23年10月1日~)